議決権行使基準

3D Investment Partners Pte. Ltd.
Last updated: June 2023

1.議決権行使に関する基本姿勢

3D Investment Partners Pte. Ltd.(以下「3DIP」) は、顧客の中長期的な投資リターン拡大を最終目的に、議決権行使を行う。この基準は、投資先企業に対して企業価値向上・持続的成長実現を促すための適切な議決権行使判断のベースを示すと同時に、投資先企業に明示することで、ディスカウント状態是正・企業価値向上・持続的成長実現への強い期待の表明につながると考える。したがって、この基準をあらかじめ投資先企業に示した上、議決権行使に際しては経営実績/結果についての客観的評価を用いることを原則とし、建設的な目的を持った対話(エンゲージメント)などを踏まえた上で、透明性・客観性・再現性のある行使判断に努める。

2.議決権行使判断の際に重要視する指標

3DIPは、投資先企業が株主資本コストを上回る高い事業収益性・資本効率を有し、資本市場で高評価であることを常に期待している。投資先企業の本源的価値の顕在化がそのポイントと考え、議決権行使でも本源的価値の顕在化と中長期的な企業価値向上につながる経営戦略の実施、それをサポートするガバナンス体制が整備されているかを重要視する考えである。また、企業価値と密接に関連する株価及び株価との関連性が近い指標を見ることで、客観性保持に努める。主たる指標とその理由は以下のとおりである。

(1)Total Shareholder Return(TSR:株価変化率+配当利回り)

・株式市場全体や同業他社水準と比較して、株主リターンの観点から経営実績を評価する。

(2)ROE

・ROE10%や同業他社水準を目安として、株主資本コストへの意識及び資本効率について評価する。

(3)PBR(不動産含み益等バランスシートへの反映が不十分と思われる部分があれば純資産に繰り入れて修正)

・PBR(純資産修正後)が1倍以下の場合、資本効率に加え収益持続性等留意点があるとの観点で評価する。

(4)一株当たりEBITDAR

・一株当たりEBITDARはコア事業収益と資本効率性のハイブリッド指標。EBITDARは、営業利益に減価償却費・のれん代償却費及び地代家賃・構造改革費用を足し戻すことで算出、不動産等事業資産が自社物件か賃借かの違いによる収益差を解消し、コア事業収益(の推移)を評価の対象とする。それを一株当たりとすることで、自社株買い実施効果など資本効率変化の観点が含まれた評価になる。

(5)株主還元

・財務体質改善や成長投資/設備投資動向等の経営戦略との整合性を踏まえ、総還元性向により株主への適切な還元が実施されているかどうかを評価する。

3.判断の目安

原則として以下の内容を判断の目安とする。

(1)取締役選任(監査役選任もこれに準ずる)

・TSRが配当込みTOPIX及び同業他社平均を継続的に上回る。

 =>過去3年間のTSRが配当込みTOPIX未満又は同業他社平均未満の場合、再任取締役に反対。

・ROEが10%以上・同業他社平均を上回り、かつPBR(純資産修正後)が1倍超。

 =>直近のROEが10%又は10%以上でも同業他社平均を下回った場合、ROE10%以上かつ同業他社平均を上回っても直近のPBR(純資産修正後)が1倍以下の場合、再任取締役に反対。

・一株当たりEBITDARの向上が同業他社平均を上回る。

 =>過去1年間の一株当たりEBITDARの変化率が同業他社平均を下回った場合、再任取締役に反対。

・企業価値に重大な影響を及ぼした不祥事・経営混乱等がない。

 =>あった場合は再任取締役に反対。

・株主との利益相反や著しい株主軽視など不適切な実績等がない。

 =>あった場合は再任取締役に反対。

・ガバナンスに信頼がある。

 =>社外取締役が取締役会の過半数を超えないなど考慮すべき状況の場合で、ガバナンスに信頼が置けないと判断される場合、再任取締役に反対。

・株主との対話、IR・情報開示に積極的である。

 =>株主対応に著しい不足があった場合、当該取締役の再任に反対。

・その他、企業価値の継続的な劣後に結び付くような不適切性・不適格性がない。

 =>不適格と思われる懸念・事案があった場合、当該取締役の再任・新任に反対。

*社外取締役選任にかかる事項(社外監査役選任もこれに準ずる)

・執行から独立し、株主の代表者として監督機能を発揮できる。

・企業価値向上・持続的成長の観点から適切な意見を述べる知見等を有する。

・兼職数や出席率が適切であり、社外取締役としての責務に十分な時間が取れる。

 =>東証の独立役員の届け出がされさない、在任年数が累積12年以上、メインバンクや資本・業務提携先など固定的関係先の出身者、兼職数が当該企業を含め5社超(招集通知から個別判断)、直近期の取締役会/監査役会への出席率が80%未満、その他不適格と思われる懸念・事案があった場合、当該取締役の再任・新任に反対。

*剰余金処分にかかる事項

・原則、剰余金処分議案は賛成するが、不適切と思わる剰余金処分/株主還元となっている場合、取締役選任議案において再任取締役に反対の行使を行う。

 =>成長投資/設備投資など経営戦略との整合性が合理的に認められる場合を除き、過剰な内部留保など還元可能な現預金等を保有の場合、直近のROEが10%未満かつ総還元性向30%未満の場合、再任取締役に反対。

(2)役員報酬

・企業価値と連動し、役員のインセンティブ向上に寄与する報酬体系であることを原則とする。

・企業価値向上・持続的成長のためのインセンティブとして適切な株式報酬(ストックオプション・信託型・特定譲渡制限付株式)であること。なお、権利行使価格・付与株式数・総額等の適切性については個別に判断する。

・社外取締役への報酬について、企業価値向上・持続的成長のための監督機能強化が期待できる場合は賛成する。

・賞与について、経営実績/結果や株主還元の水準と比較して不適切でない場合は賛成する。

・役員退職慰労金については、在任期間中の不祥事、TSR・ROE基準抵触の有無、支給金額開示の有無を考慮し個別に判断する。

(3)買収防衛策

・買収防衛策について、企業価値向上・持続的成長の観点で合理的な説明がされている場合を除き、原則反対する。なお、有事導入型の買収防衛策については、状況を踏まえ、個別に判断する。

(4)定款変更

・企業価値向上・持続的成長に寄与するかどうかの観点で、個別に判断する。

(5)買収・合併

・一株当たり株式価値向上に寄与するかどうかの観点で、以下の条件を考慮し個別に判断する。

・当該買収・合併により、一株当たり株式価値の向上が促進される。

・合併対価・交換比率算定の根拠・公平性が十分である。

・株主と経営陣における利益相反が生じていない。

(6)増資

・一株当たり株式価値を高めるかどうかについて分析し、以下の条件を考慮し個別に判断する。

・資金使途が企業価値向上・持続的成長のために合理的である。(例:企業価値向上に反する買収防衛のための第三者割当増資等は反対する)

・増資による株式希薄化の程度が、実現される企業価値向上の程度に照らして合理的である。

(7)会計監査人の選任
・当該企業から独立しており、十分な監督機能を発揮できるかどうかを考慮し、個別に判断する。

(8)ESG

・ESG関連の議案について、企業価値向上・持続的成長に結び付くかどうかという観点で個別に判断する。

(9)株主提案

・情報開示強化を主たる目的とした提案を含め、企業価値向上・持続的成長に寄与するかどうかの観点で個別に判断するが、株主共同の利益に資すると合理的に考え難い特定思想や、特定の株主・ステークホルダーにのみに関連する提案は原則反対する。

・剰余金処分や取締役/監査役の選解任など、会社提案の議案と関連付けて考える必要がある場合は適切な対応を行う。